Return to site

『つなひき』

                  ジョン・バーニンガム 作
                       谷川俊太郎 訳
                          BL出版
                       1620円(税込)

 1960年代に発表された、バーニンガムその人の骨太な作風を感じられる絵本をご紹介します。

吉田 真澄

 2013年に邦訳されたバーニンガムの作品です。カバー裏には、「1968年出版の絵本を再編集し、文章もバーニンガム自身が書き直したもの」と説明されています。1960年代に創られたこの作家の作品は、どれも、太くがっしりとしたデッサンと油絵の具で大胆に塗り重ねたような画面が特徴ですが、その系列に連なる一冊です。

 お話は、アフリカの民話をもとにした簡潔な筋で、一番弱いものが知恵と勇気を駆使して力の強いものを倒す、という昔話では定番の物語です。しかし、バーニンガムが再話することで、登場人物たちには、少々誇張気味ではあるものの、性格付けがなされ、自由奔放な構図と目の覚めるような色彩の絵が、動物たちの住む舞台となるジャングル(お話には「森」とありますがジャングルの方が絵にしっくりきます)のスケールの果てしなさと、総(そう)包(ぐる)みでの異世界ぶりを存分に描き出しています。

 ゾウとカバ、それぞれの巨大さが感じられるよう、対象ギリギリまで迫ったクローズアップの構図、あたかもドローンで撮影したかのような空からの、縦横多面的な構図。そして、何と言っても、こっくりとした深みのある力強い色遣いに目を奪われるのです。瑪瑙(めのう)のように茶色がかった一面の夕空、下の方には、二羽のフラミンゴがぼんやりと白く浮かび上がっています。麦わら色の大きな月と漆黒の夜空―ここでは、大きな動物であるゾウでさえ、月との対比で、こじんまりと見えます。

 堂々と異彩を放つ画面に、あに図らんや、無表情な動物たち。バーニンガムの他の作品がそうであるように、その面持ちにしんみりとした淋しさが漂います。明快な昔話の筋なのに、まんまと“してやったり”の最終場面を迎えたウサギの“無”表情までもが、そこはかとなく哀愁を帯びて見えるのです。1963年のデビュー作『ボルカ』から、『バラライカねずみのトラブロフ』、『はたらくうまのハンバート』、『ずどんどいっぱつ』、そして1968年刊行のこの本……1960年代に発表されたバーニンガムの初期の作品には、どれも、ほろ苦い寂莫を感じます。その美的情緒のようなものが、重厚で男性的な絵と不思議に混ざり合って、希有なオリジナリティーを生みだしているのです。

All Posts
×

Almost done…

We just sent you an email. Please click the link in the email to confirm your subscription!

OKSubscriptions powered by Strikingly